小児矯正は何歳から
― お子さまの成長段階から考える、治療開始時期の判断
小児矯正は何歳から
― お子さまの成長段階から考える、治療開始時期の判断

「そのうち生え変わるから、もう少し様子を見ましょう」と言われたけれど、本当にこのままでいいのだろうか——。
お子さまの歯並びについて、そんな迷いを抱えたまま来院される保護者の方は、とても多くいらっしゃいます。
小児矯正には、お子さま一人ひとりの成長に合わせた開始時期があります。そしてその時期は、歯並びの見た目だけで決まるものではありません。このページでは、豊中市・岡町で小児歯科と小児矯正に取り組む当院の考え方を、日本矯正歯科学会をはじめとする各学術団体の指針もふまえながら、できるだけわかりやすくお伝えさせて頂きます。
小児矯正のご相談で最も多いのが「何歳から始めればいいですか」というご質問です。ひとつの答えとしては「気になった時点でご相談ください」に尽きるのですが、目安として次のような節目があります。
乳歯が生えそろう時期。受け口(反対咬合)や、上下の歯の中心が大きくずれるような噛み合わせが見えてきます。
前歯と6歳臼歯が生えてくる時期。永久歯の並ぶスペースが足りているか、上下のあごのバランスはどうかが判断しやすくなります。
上あごの成長が落ち着いてくる時期。骨格へ働きかけられる期間としては、ひとつの区切りになります。
つまり「早ければ早いほどよい」わけでも、「永久歯が生えそろうまで待つべき」でもありません。お子さまの成長がいまどの段階にあるかを見きわめたうえで、必要な時期に、必要な分だけ介入する。これが小児矯正の基本的な考え方です。
あまり知られていないことですが、上あごと下あごは同じペースで大きくなるわけではありません。上あごは脳の成長に近いパターンで比較的早い時期に伸び、下あごは身長が伸びる思春期に大きく成長します。
この時期の違いは、治療の選択に直結します。たとえば上あごの幅を広げたい、上あごの前方への成長を促したいという場合、上あごの成長がまだ残っている時期でなければ、装置による効果は限られます。反対に、下あごのバランスにかかわる治療は、思春期の成長を見ながら進める必要があります。
当院では、レントゲン写真や顔貌・口腔内の記録をもとに、お子さまが成長のどのあたりにいるのかを確認したうえで、装置を使う時期をご提案しています。
乳歯列期のすき間や、生え変わり時期の一時的なガタつきなど、本当に経過を見てよいケースもたくさんあります。問題なのは、「見なくてよい経過観察」と「見ておくべき経過観察」が区別されないまま時間が過ぎてしまうことです。
骨格にかかわる要素(あごの幅が狭い、上下のあごの前後的なズレが大きい など)は、成長が終わってしまうと矯正だけでは対応しきれず、選択肢が抜歯を伴う治療や外科的な治療に限られてくることがあります。「いま治療を始めるべきか」だけでなく、「いつまでに判断すればよいか」を知っておくこと。これが、保護者の方にとって一番の安心材料になると考えています。
小児矯正について調べていると、「早く始めたほうがよい」という情報と「永久歯が生えそろってからでよい」という情報の両方に出会い、戸惑われることがあると思います。
実際、上の前歯が突出しているお子さまの早期治療については、永久歯列が完成するまで治療を行わないことを推奨する診療ガイドラインが公表されています。一方で、日常の臨床では早期治療によって良好な結果が得られている例も多く、専門の団体からは、十分な検査と診断を行い、長期的な治療計画と保護者の同意のもとで行うのであれば早期治療に問題はない、という見解も示されています。研究の条件をそろえることが難しい分野であり、判断の根拠が一本にまとまりきっていないのが現状です。
当院がこのことをあえてお伝えするのは、「早期治療は常に正解」という前提でお話しするべきではないと考えているからです。大切なのは、お子さまの状態を検査のうえで見きわめ、いま介入する理由があるのかどうかを説明できることだと考えています。
一方で、成長期にしか対応できない、あるいは早く対応したほうが負担が少ないとされる状態もあります。当院では、次のような場合に早期の介入を検討します。
これらに当てはまらない場合は、経過を見ながら適切な時期を待つご提案をすることもあります。「いま何もしない」という判断も、検査と診断にもとづいて行うからこそ意味を持ちます。
矯正治療の進め方については、学会から標準的な診療の考え方を示した指針が公表されており、検査・診断・治療計画の立案・説明と同意という流れを踏むことが基本とされています。当院でもこの流れに沿って診療を行っています。
具体的には、口腔内の診察に加えて、頭部X線規格写真(セファログラム)による骨格の分析、パノラマX線写真による永久歯の本数や向きの確認、歯型の模型による歯の大きさと顎の大きさの比較、口腔内写真や顔貌写真などを用います。骨格の成長段階の評価も、開始時期を判断するうえで重要な情報になります。
見た目の印象だけで「早く始めたほうがよい」と申し上げることはいたしません。資料をそろえたうえで、なぜその時期なのかをご説明します。
歯並びは、日常の何気ない癖から少しずつ影響を受けます。次のような様子が見られる場合、歯そのものより先に「お口の使い方」を整えたほうがよいことがあります。
食事に時間がかかる、丸のみが多い、音を立てて食べる。サ行・タ行の発音が不明瞭。頬づえが癖になっている——こうしたことも、噛む力や舌の位置、姿勢とつながっています。近年はこうした状態が「口腔機能発達不全症」として整理され、歯科で管理・訓練の対象として扱われるようになりました。「歯医者に相談することかな」と迷われる内容ほど、実はお話しする価値があります。

当院が小児矯正で大切にしているのは、「歯を並べること」よりも「並んだ状態を保てるお口の環境をつくること」です。舌が正しい位置にあるか、唇はきちんと閉じられるか、飲み込むときに余計な力が入っていないか。これらが整わないまま歯だけを動かしても、後戻りが起こりやすくなります。
そこで当院では、MFT(口腔筋機能療法)に力を入れています。舌や唇、頬の筋肉を、お子さま自身がトレーニングを通じて正しく使えるようにしていく方法です。装置に頼りきらず、お子さまの持っている成長する力を引き出すことを目指します。
症状や成長の段階によって、適した装置は変わります。当院では次のような装置を症例に応じて使い分けています。
口腔習癖の改善や、前歯の噛み合わせの改善に用いるマウスピース型の装置
上あごの幅が狭い場合に、土台から広げていく装置
受け口の傾向があり、上あごの前方への成長を促したい場合に使用
噛み合わせが深いタイプ(過蓋咬合)に用いる装置
奥歯の位置を保ち、永久歯が並ぶスペースを確保する装置
永久歯が生えそろった後の仕上げの治療
これらの装置はあくまで一例ですが、取り扱っている装置の種類が多いほどよいということではありません。選択肢を持ったうえで「このお子さまには、この時期に、これが必要かどうか」を判断できることが大切だと考えています。必要がなければ、装置を使わずに経過を見るご提案をすることもあります。
小児矯正は、乳歯と永久歯が混じる時期に行う一期治療と、永久歯が生えそろった後に行う二期治療に分かれます。一期治療はあごの成長を整えて土台をつくる段階、二期治療は歯を一本ずつ整える段階です。
一期治療をしたからといって、必ず二期治療が不要になるわけではありません。ただ、土台が整っていることで、二期治療がより短く、抜歯をせずに済む可能性や矯正治療後の後戻りが少なくなる可能性が高いと考えられます。
矯正治療は、身体に力を加えて変化を起こす治療です。期待できることだけでなく、起こりうることも知っていただいたうえで判断していただきたいと考えています。
これらは、定期的な通院と丁寧な口腔清掃、ご家庭でのご協力によって、多くの場合は抑えていくことができます。気になる症状があるときは、次回の予約を待たずにご相談ください。
初回は、保護者の方が気になっていることを伺うところから始めます。お口の中を拝見し、現時点で考えられる状態と、いま治療が必要か、それとも経過を見てよいかの見通しをお話しします。この時点で治療を決めていただく必要はありません。
治療を検討される場合は、前述の資料をお預かりし、後日、診断内容と治療計画、使用する装置、期間、費用、想定されるリスクをご説明します。お子さまご本人にも、何のために何をするのかが伝わるようにお話しすることを心がけています。ご家庭で検討されたうえで、開始するかどうかを決めていただいて構いません。
矯正治療は原則として自由診療のため、症状や治療の範囲によって費用と期間は変わります。当院では、治療を始める前に総額と支払い方法を明確にお伝えし、ご納得いただいてから開始します。
なお、国が定める特定の先天性疾患にともなう咬合異常、前歯の永久歯が3歯以上生えてこない場合、外科手術を併用する顎変形症の治療については、公的医療保険の対象となります。これらは所定の施設基準を満たす医療機関での取り扱いとなるため、該当する可能性がある場合は、適切な医療機関をご紹介いたします。
また、お子さまの噛み合わせの改善を目的とした矯正治療は、医療費控除の対象となる場合があります。
必ずしもそうとは限りません。早期治療は「その時期にしかできないこと」を行うためのもので、結果として全体の通院期間はむしろ長くなる場合もあります。ただし、その分だけ将来の治療がより穏やかなもので済む可能性があります。どちらの見通しもお伝えしたうえで、ご判断いただきたいと考えています。
小児矯正は、始めることそのものが目的ではありません。「いま何が起きていて、これからどう変化していくのか」を知ったうえで、ご家族が納得して選べることが何より大切だと考えています。
当院は阪急宝塚線・岡町駅から徒歩7分、豊中簡易裁判所の向かいにあります。14台の無料提携駐車場もご用意しておりますので、小さなお子さま連れでも安心してお越しください。ちょっとした相談だけでもまったく構いません。気になることがありましたら、どうぞお気軽にお声かけください。